「思い出させてあげますわ。あの日、貴方は偶然に、婚約破棄されて泣くわたくしの前に現われた。ですが後から思い返してみれば、裏庭の奥の奥で昼寝なんておかしいこと。そこから推察するに、貴方は、わたくしが卒業パーティーの最中に婚約破棄されるのを知っていて、表で待っていたのでしょう。わたくしが裏庭に下りていったから、急いで林のなかを抜けて、たまたまそこに居合わせたように出てきた。ちがっていて?」

「…………ちっ」

 図星だったらしい。舌打ちして立ち止まったレイノルドを、アルフレッドはわなわなと震えながら見上げた。

「レイノルド、お前は私の婚約者に恋をしていたのか? マリアヴェーラを手に入れるために、スート商会の悪事を見逃していたのか?」
「何が悪い。俺は悪辣王子らしく振る舞っただけだ」

 レイノルドは、今までの鬱憤を晴らすかのように、足下に落ちていた魔晶石をガッと蹴り上げた。