「ご周知の通り、レイノルド様は『悪辣王子』と呼ばれています。素行が悪いことで有名で、町の悪党たちとも繋がりがありました。彼は、ギャンブル場に顔を隠した貴族が出入りしていることも、スート商会の者が投資の誘いをしていることも知っていました。ですから、アルフレッド様にプリシラ・スートが近づいていると察知したとき、誰より早くその意図を理解したのです」

 アルフレッドに婚約破棄されて大泣きしていたマリアに、レイノルドはこう言った。

 ――半年ほど前から、プリシラとかいうクラスメイトにぞっこんだから、そうなるのは遠くないと思っていた。

「レイノルド様は、全ての悪事を見越したうえで、アルフレッド様がプリシラ・スートに魅了されていくのを止めなかった。その方が、彼に利があったからですわ」
「身に覚えがない」