「わたくしがスート商会のたくらみに気づく以前から、疑いを持って彼らを追っていた人物がいました。第二王子のレイノルド殿下です」

 マリアが名を出すと、衆目がいっせいに壁際に向いた。
 そこに立っていたレイノルドは、不満そうに眉根を寄せる。

「話がちがう。兄貴が騙されていることを暴いて終わりにする手はずだろう」
「せっかく国内の要人が集まっているのに、ただ悪事を暴いて帰すとでも? わたくし、やるからには完璧にしないと気が済まないのですわ。どうぞこちらへ」

 大きな溜め息をついて、レイノルドは壁を離れた。
 彼が近づいてくるのを見たマリアは、国王へと視線を戻す。

 国王も王妃も、困った表情をしていた。この後に及んで第二王子まで醜聞をさらされるのかと思っているのだろう。悪いが、もうマリアは止まれない。