「そんな……。私の愛したプリシラが、存在しなかったなんて……」

 へなへなと座りこむアルフレッド。逃げようとした取締役は、ドレスの裾につまずいて転ぶ。ざわつく衆目を静めるため、国王は大声で呼びかけた。

「静粛に。このたびの婚約式典は中止とする!」
「お待ちください、国王陛下」

 マリアは、その場で腰を落としてこいねがった。

「わたくしに、少しだけお時間をくださいませ」