手を伸ばして、プリシラの首に掛かっていた『魔晶石』のネックレスを引きちぎると、ふわっと彼女の周りが光った。魔法がかかっていたのだ。
 ベールのように体を包んでいた光は、砂へと変わって床に落ちていき、やがて――でっぷりと太った五十代の男性が姿を現わした。

 びっくりしたアルフレッドは、袖を掴んでいた手を振り払って剣を抜く。

「なっ、なんだ貴様!?」
「その方がスート商会の取締役ですわ。アルフレッド様に取り入るため、魔晶石で可憐な少女の姿に化けて、一人娘プリシラを名乗って学園に入ったのです」

 禁じられた魔法に耐性がないタスティリヤ王国の人間は、魔晶石を身につけていても気づかない。取締役は、それを逆手に取って堂々とアルフレッドに近づいたのだ。