レイノルドは、王族席の後方の壁に寄りかかっていた。するどい目で睨まれた公爵は口を閉じて座席にちぢこまる。これでマリアが上がる舞台は整った。
 
「わたくしは、第一王子殿下とプリシラ様のご婚約に反対いたします。プリシラ様のご実家であるスート商会は、タスティリヤ王国に魔晶石を流通させる野望を持っています。プリシラ様は、魔法を解禁させるためにアルフレッド様に取り入ったのです」

「私は取り入られてなどいない! 外国では当たり前のように使われている魔法があれば、タスティリヤ王国はより栄えるだろう。そう考えて解禁しようとしているのは私の意思だ!」

 胸に手を当てて主張するアルフレッドを無視して、マリアは国王に目を向けた。

「この調子では、国王陛下も手を焼かれておいでしょう」
「まさしく。アルフレッドに魔法を解禁するべきだと進言されて、そのたびに諫めている。スート商会の手ぐすねがあったのだな」