集まる衆目に向けて、マリアは手にした扇のかげで微笑んでみせる。

「あら。式典の最中にお騒がせして、大変申し訳ございません。二人の仲を認めるまえに、少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか。この茶番を見せられているのが苦痛で仕方ありませんお」
「私とプリシラの邪魔をするというのか、マリアヴェーラ! 嫉妬は見苦しいぞ」
「アルフレッド様。嫉妬するような恋人たちがここにいまして?」

 マリアは、アルフレッドとプリシラの側に歩いて行くと、ドレスをつまんで国王にお辞儀をした。

「ジステッド公爵家のマリアヴェーラ・ジステッドでございます。このたびの第一王子殿下のご婚約に異議を申し立てるために参りました」
「マリアヴェーラ、何をしている。戻れ!」

 父ジステッド公爵の怒声が飛んできたが、マリアは笑顔で答える。

「お父様。口のきき方にお気をつけてくださいませ。わたくしには、第二王子レイノルド殿下の後見がついておりますのよ」