「――それで、あんたにプロポーズした」

 レイノルドから過去を聞かされたマリアは戸惑っていた。

 ハートの木に向かって、恋が叶うように祈った記憶はある。だが、となりにいたのがアルフレッドではなく、レイノルドだったということは今まで忘れていた。

(わたくしを、ずっと、想っていた?)

 レイノルドは、そんな素振り少しも見せなかった。マリアが卒業パーティーで婚約破棄されて、裏庭の奥の奥で大泣きするまで、会話の一つもしなかったのだ。

 彼にとって、あの日、マリアに出会えたのは最後の幸運だったのかもしれない。
 タイミング良くあの場に現われるなんて奇跡、そうそう起こるものではない。