「そんなに泣くことか」
「当たり前でしょう。わたくし、王子の妃として相応しい人物になれるように、アルフレッド様に好きになっていただけるように、人生の全てをかけて参りましたのよ……」

 話すとまた涙がこぼれ落ちてきた。
 プリシラのように可憐な少女が泣くなら可愛げもあるが、マリアが泣いたところで不格好なだけだ。

 うつむいてグズグズと鼻を鳴らすマリアに、レイノルドは手をのばした。
 壊れものでも触るような仕草で、頬に流れた雫を親指でぬぐって、一言。

「いっそ、俺と婚約するか」

 告げられたマリアはおどろきに目を見開いた。

「レイノルド様と?」