【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい

 泣き顔なんて情けないものを見せられないという、第一王子の婚約者として培ってきたプライドが、マリアを突き動かしていた。
 もう元婚約者なので、見栄を張っても仕方がないのだけれど。

「う……うぅ、うえぇぇえん!」

 裏庭の奥の奥、生徒はまず来ないだろう物置小屋の近くで、マリアの我慢は限界をこえた。地面に座りこんで、赤ちゃんみたいな大声を上げる。

「アルフレッドさま、アルフレッドさまぁ、どうしてわたくしではダメだったの! うえぇえええぇ、うえぇえええん!」

 大粒の涙をぬぐうこともせずに喚いていると、そばの茂みがガサリと揺れた。

「ひっ?!」
「うるさい……」