【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい

 きゅうっと心臓が痛くなって、マリアは後ずさった。いきなり急角度で口説かれるとは思っていなかったので、鼓動がバクバクと信じられないほどに高鳴っている。

(このままではレイノルド様の思うつぼだわ!)

 マリアは、「ごほん!」と令嬢らしからぬ咳をして、高慢な表情を作る。

「見せびらかす? なんですの、その独占欲は。わたくし、まだ、あなたのものではございませんのに」
「これからそうなるから問題ない」
「子どもみたいな自己主張ですわね。それで口説いているおつもりかしら」
「実力行使されたいなら、本気で行くぞ」
「貴方の本気がどれほどのものか、見せていただきましょう。できるならですけれど」

 せせら笑うマリアに、レイノルドはニイと唇を引いた。

「ああ。可愛い悲鳴が聞けると思うと楽しみだ」