「お母様、笑わないで聞いてくださいませ。今さらかもしれませんが、わたくし、恋がしたいのです……」

 自由意志で恋をするのが、貴族にとってどれだけ罪深いか、マリアは知っている。
 でも、口をついて出る願いはとめられない。

「アルフレッド様に抱いていたような思慕ではなく、好きで好きでじっとしていられなくなるような恋人を作りたいのです。だから、修道院には入りません」

 母は、びっくりした顔をしながら「じゃあ、これはいらないわね」と手紙を握り潰した。

「今さらなんてことはありませんよ。あなたの恋が、どこで見つかるかは分からないけれど、お部屋のなかで泣いていないで、外に出て行かなければならないわね。あなたに素敵な恋人ができたら、ぜひおうちに連れてきてほしいわ」

「そうします。わがままを聞いてくださって、ありがとうございます。お母様」
「かまいませんよ。母は、あなたの幸せを願っているのですから」