困っている人を見たら声を掛けるのは、向こう見ずなだけ。第一王子の彼が解決しなくても、従者が何とかしてくれると知っているからだ。
 女性をすぐにエスコートするのは、家庭教師の指導のたまもの。その場によって臨機応変に対応できないので、とにかく腕を出せと体に叩き込まれている。
 賞賛されなくても気にしないのは、周りの声を聞いていないからだ。自分を心が広くて賢い王子だと過大評価しているので、他人が何を思っていようがビクともしないのである。

 金髪と、顔立ちと、喜怒哀楽が明瞭なところと、身長は……。
 マリアの理想とマッチングしているというよりは、マリアが他の男性をよく知らないから他のバリエーションを書けないだけだ。

「このわたくしが、このくらいで諦めるものですか! わたくしにだって、自分なりの好きなタイプはいるはずよ!」

 アルフレッド風で満たされたページを破り捨てて、マリアは真っ白な紙面に向き合った。