帽子のつばを下ろして顔を隠すマリアを、ペイジは背に隠してくれた。
「私はドレス工房の者です。ルビエ公女殿下のウェディングドレスの件で呼ばれました」
「そうだったのか。呼び止めてすまなかったな」
通行証を確認した衛兵は、マリアの顔を見ずに通してくれた。
(危なかったわ)
ほっと胸を撫でおろして進む。
門から宮殿までの白い石畳を歩くのは初めてだった。いつもは馬車でエントランス近くまで移動するからだ。
十分ほど歩いてやっと宮殿に入る。
正面玄関は国王や賓客が使うためにあるので、出入りする商人や職人は小脇に設けられた勝手口を使う。
ここでも衛兵に睨まれたが、ペイジが文句を言われる前に通行証を掲げたので止められなかった。
採寸をする部屋に到着すると、薄着になったルクレツィアが腕を組んで座っていた。
職人が自分より遅くやってきたことが気に入らないようで、ツンと顔をそむけている。
「お待たせしてすみません。ドレス工房のペイジです。こっちは助手のマリオン」
「よろしくお願いします」
マリアも低い声で挨拶する。
ルクレツィアは、マリアの姿をちらっと見て「むさい男」と吐き捨てると、おっくうそうに立ち上がった。
「日が暮れると思いました。早く終わらせなさい」
「かしこまりました」
バッグからメジャーを取り出したペイジと頷きあって、マリアはその場を離れた。
(採寸している間、ルクレツィアは動くことができないわ。それに、今ならオースティンも近くにいない)
彼女たちが何を企んでいるのか探るには絶好の機会だ。
マリアはバッグから取り出したデザイン画の束を抱えて、侍女たちが待つ隣室に入った。
「こちらに荷物を置かせてください」
「ええべ。ここに起けー」
「助手さんお茶は飲むが? カップケーキもあるべよ」
テーブルに軽食を広げて休憩していた侍女たちは、笑顔でマリアを手招きした。
主とは正反対の人の良さそうな娘たちだ。
しかし、マリアは彼女たちの発音が気になった。
(タスティリヤ南方の訛りがあるようね)
「私はドレス工房の者です。ルビエ公女殿下のウェディングドレスの件で呼ばれました」
「そうだったのか。呼び止めてすまなかったな」
通行証を確認した衛兵は、マリアの顔を見ずに通してくれた。
(危なかったわ)
ほっと胸を撫でおろして進む。
門から宮殿までの白い石畳を歩くのは初めてだった。いつもは馬車でエントランス近くまで移動するからだ。
十分ほど歩いてやっと宮殿に入る。
正面玄関は国王や賓客が使うためにあるので、出入りする商人や職人は小脇に設けられた勝手口を使う。
ここでも衛兵に睨まれたが、ペイジが文句を言われる前に通行証を掲げたので止められなかった。
採寸をする部屋に到着すると、薄着になったルクレツィアが腕を組んで座っていた。
職人が自分より遅くやってきたことが気に入らないようで、ツンと顔をそむけている。
「お待たせしてすみません。ドレス工房のペイジです。こっちは助手のマリオン」
「よろしくお願いします」
マリアも低い声で挨拶する。
ルクレツィアは、マリアの姿をちらっと見て「むさい男」と吐き捨てると、おっくうそうに立ち上がった。
「日が暮れると思いました。早く終わらせなさい」
「かしこまりました」
バッグからメジャーを取り出したペイジと頷きあって、マリアはその場を離れた。
(採寸している間、ルクレツィアは動くことができないわ。それに、今ならオースティンも近くにいない)
彼女たちが何を企んでいるのか探るには絶好の機会だ。
マリアはバッグから取り出したデザイン画の束を抱えて、侍女たちが待つ隣室に入った。
「こちらに荷物を置かせてください」
「ええべ。ここに起けー」
「助手さんお茶は飲むが? カップケーキもあるべよ」
テーブルに軽食を広げて休憩していた侍女たちは、笑顔でマリアを手招きした。
主とは正反対の人の良さそうな娘たちだ。
しかし、マリアは彼女たちの発音が気になった。
(タスティリヤ南方の訛りがあるようね)



