卒業パーティーの後、裏庭の奥の奥でしたみたいに大声で泣き出した。

「わたくしのことを大好きだって言ってくださったのにぃいい! 嘘つきぃいいい!」

 涙をボロボロこぼして泣きわめくと、控室のすみで人影が動いた。

「なんだなんだ大声を出して。って、貴方かマリアヴェーラ!」

 泣き声を聞きつけてやってきたのは、アルフレッドだった。
 レイノルドと色違いの正装で、緋色のマントを肩掛けにしている。

「アルフレッド様、ダンスホールにいなくてよろしいのですか?」
「あそこにいると私は針のむしろになる。第一王子なのにレイノルドの側近の側近として働いている私に、親切な貴族がいるわけないだろう?」

 それも自業自得だ、とアルフレッドは開き直った。
 愚かな王子だと思っていたが、役割を与えられて努力するうちに、少しは自分を客観視できるようになったようだ。

「貴方が泣いているのは、レイノルドがルクレツィア公女殿下を連れているせいだな?」
「……いいえ」

「違う? では何が理由なんだ」
「相手の術中にはまって、恋人を奪われた悔しさにですわ!」

 ドン! とマリアは、拳を床に叩きつけた。
 すさまじい勢いに、アルフレッドがぎょっとするが火がついた憤りは止まらない。

「このドレスはレイノルド様の名前で届きましたの。てっきり、彼がわたくしに贈ってくれたと思い込んできて来たらば、ルクレツィア様が同じドレスをお召しになっていました。わたくしを礼儀知らずの捨てられ婚約者に仕立て上げるために、彼女がわざと送ってきたに違いありませんわっ!!」

 悔しくてバンバンと床を叩きながら、マリアはわんわん泣いた。

「レイノルドさまぁ、その女は悪女なんですのよぉ! うえぇええん!!」

「れ、レイノルドをかけて女の闘いが繰り広げられていたんだな……。高嶺の花と呼ばれた貴方がこんな風に感情をあらわにするとは知らなかった。大声を出しては、みっともなく泣いている姿を誰かに見られてしまうぞ。私が拭いてやろう」

 若干引いた顔でハンカチを取り出したアルフレッドの手首を、マリアはぱしっと掴んだ。

「ひえっ!?」