十六歳のマリアは、十六年ものあいだ、アルフレッドの婚約者だった。
 古い時代に王族から分かれてできた公爵家に生まれた女の子は、一カ月前に生まれたばかりの第一王子の相手として最適だったのだ。

 そのため、マリアは妃となるための教育を幼い頃から受けた。
 話し方、立ち居振る舞い、手紙の書き方、ダンス、裁縫、国の歴史や貴族名鑑の暗記だけでなく、諸外国の友好敵対関係などなどなど。
 将来の王妃になるために血の滲むような努力を重ねて、マリアは完璧な令嬢になった。

 望外に喜ばれたのは、マリアの外見だった。

 父に似て高身長な体は誰よりも美しくドレスを着こなすことができたし、高くてほっそりした鼻や、長い睫毛に彩られたマーブル型の瞳は宝石にも負けない気品があった。

 亜麻色のたおやかな髪と白すぎない肌は、赤や黒、青といったはっきりした色合いに際立つ。織物の柄は小ぶりなものより大柄、コサージュやアクセサリーも豪華なものほど似合う。