「聖女ネリネよ。貴様、よくも謀ってくれたな!」
「し、知らない。あたし、何にも知らないわ!」
「黙れ!!」

 椅子から立ち上がった国王は、人差し指でネリネをさし、ツバを飛ばしながら言い放った。

「聖女ネリネを追放する! レンドルム辺境伯の五男も同罪だ。二度と王都へ立ち入れると思うな!!」
「その二人、レンドルムの領地で受け入れます」

 辺境伯は、実に申し訳なさそうに頭を垂れた。

「我が愚息の我がままが全ての引き金。二度と良からぬ企みを引き起こさぬように、偽聖女と愚息を結婚させ、辺境騎士団の寮の管理人として、炊事洗濯掃除と一生下働きをさせて反省させましょう」

「そんなの嫌よお!!」
「あたしだって嫌よ! この男と結婚させられて、田舎で貧乏生活なんてっ!!」

 クレロとネリネの絶叫が重なった。立ち上がった騎士たちに捕えられそうになったので、ネリネは庭の奥につづく通路に逃げこんだ。

 強く地面を踏み切ると、足下がふかっと沈んだ。

「なに!?」

 足下から伸びていた紐が切れて、たわんだ形で固定されていた庭木がバネのように伸びた。その動きに連動して、木に結びつけられ、浅く土をかぶせて隠されていた縄がしまり、ネリネの両足を捕えて吊り上げた。

「きゃあああああーーーー!!!」