便箋を握りしめると、カサリと紙がたわんだ。
 一枚目にぴったり重なるように、薄紙が貼り付けられている。
 慎重にはがすと、それは走り書きだった。

『――ジステッド公爵に閉じ込められていると聞いた。ヘンリーに隠れ家を用意してもらったので、身の回りの物だけ持って今晩ここへ――』

 マリアは、待ち合わせ場所の住所をインクを乾かしていた便箋に書き入れると、もらった手紙は全て火をつけて燃やしたのだった。