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 コベントを見送ったマリアは、部屋に戻って手紙をしたためた。
 一つはミゼルへ。今までクレロが描いた肖像画の主を全て教えてほしいというお願い。一つは王妃へ。国王の外遊について調べてほしいという要請。
 最後の一通は、レイノルドに向けての恋文――。

「失礼します、マリアヴェーラ様……あら?」

 やってきたジルは、扉のノブをガチャガチャと回した。

「お父様の命で閉じられているのよ。何か用事かしら」
「第二王子殿下から手紙が。ドアの下を通します」

 差し込まれた手紙を拾い上げたマリアは、便箋を呼んで悲鳴を上げかけた。
 多数の魔物が出没して辺境騎士団では防ぎきれないため、近く王都にいる騎士たちの遠征団を結成し、レイノルドが率いて行くという。

「そんなに危険な状況だなんて……」