「男性と二人きりになったのは、わたくしの落ち度です。恋敵の弱点を聞き出そうとして冷静さを失っておりました。二度とこんなことは繰り返しませんわ。もしも破ったら、レイノルド様の手で処刑してくださいませ……」

 澄んだ碧色の瞳が、まっすぐにレイノルドを見つめてくる。

 マリアヴェーラは、卑怯な真似はしない。明るみに出なければ何をしてもいいとは絶対に思わないし、後ろ暗いことは死んでもしない。
 なぜなら、ジステッド公爵家の令嬢に、そんな行いはふさわしくないからだ。

 貴族令嬢として完璧な存在。しかし、そこにマリア個人の恋心が加わると、怖い物がなくなってしまうらしい。

(恋ってのは厄介だ)

 レイノルドは、短く息を吐いた。

「……あんた、俺のためなら死ねるんだな」
「はい。喜んで」
「なあ」
「何でしょう?」

 レイノルドは、不思議そうに瞬きするマリアの目蓋に、そっと口づけた。

「俺も、あんたのためなら殺せる」

「ここに、ジステッド公爵はおられるか!」