手を振りながら、ヘンリーは廊下を歩いて行った。

 王妃がマリアに菓子を山ほど持たせたのは、レイノルドと周りの者でお茶をさせるためだ。
 お茶はメイドや執事が淹れるので、彼らに和解したとそれとなく吹き込み、宮殿中に噂を広める機会を与えてくれたのである。

(母上は俺らの味方、と考えてもいいのかもな……)

 その後、マリアとレイノルドは、丸テーブルについてお菓子とお茶を味わった。
 とても美味しかったが、同席したヘンリーに「ほんとうに、ほんとうに、何にもなかったわけ?」と酔っ払いみたいに絡まれて、あげくの果てに「貴様ら、その色気はハリボテか!」と叱責されてしまったのだった。