マリアは、怯えが声に現われないように、慎重に答えた。

 王妃がマリアに何をしようとしているのかは、テーブルの上を見れば分かる。

 ケーキの載った三段皿、ガラスカバーをかけられたタルト。籠に詰めこまれた著ロス。スコーンは冷めないようにウォーマーに包まれていて、カラフルなチョコやフレーク、宝石のように光るジャムがトッピング用の小皿に準備されている。

 午前中からいただくには、ボリュームが多すぎる。
 王妃がわざわざ手の込んだ品々を準備させたのは、マリアの口を割らせるためだ。

(王妃殿下は、その美しさと器量の良さから、王家に嫁いだ前例のなかった伯爵家より召し上げられた方。貴族令嬢としての身の振る舞いにかけては、他に出る者がいなかったという伝説をお持ちだわ)