(どうしてこんなことになったのかしら)

 マリアは、作り笑顔を顔に貼りつけながら冷や汗をかいていた。
 ついた丸テーブルの真っ正面には、このタスティリヤ王国の王妃――レイノルドの母親が、こちらもニコニコ顔で座っている。

 アルフレッドと同じ金色の髪は一つにまとめ、絹の光沢が美しいエンパイアドレスで高貴な雰囲気を高め、レイノルドとよく似た青色の瞳を細めている。
 しかし、目の奥は少しも笑っていない。

「マリアヴェーラさん、呼び出しに応じてくださって嬉しいわ。昨日はレイノルドが風邪をひいてお世話になったそうね?」

「はい。心細くなっておられるようでしたので、一晩お側に付き添っておりました。宮殿内におかしな噂が流れておりますが、ふしだらな行いは決してしておりません。わたくしとレイノルド第二王子殿下が潔白であることは、同じく殿下の看病をしていた近衛騎士のトラデス子爵令息が証言してくださいます」