とにかく味方を増やすのだ。金に糸目を付けず、売っておいた恩をフル活用して、敵にいたるまで懐柔する。ときには脅すこともある。

「お断りになったら、ヘンリー様が軽い気持ちでお付き合いして泣かせたご令嬢を集めて、裁判に持ち込もうと思いますがいかがでしょう?」
「ごめんなさい、それだけはやめて。家から勘当されちゃう」

 ヘンリーは、両手を挙げて申し出を受け入れてくれた。

「本当に頼めるのか、ヘンリー」
「引き受けないとオレが破滅するじゃん。『第二王子は、好きな令嬢が一晩部屋にいたのに指一本も触れないダメ男だった~』って大声で吹聴しとく。でも、対策を練るのは遅かったかもね?」
「なぜです?」

 次に言われた言葉に、マリアの呼吸が止まった。

「マリアヴェーラ様にお呼び出しですよ。王妃サマから、直々に」