本来、王族の結婚というのは慎重な選定によって行われるもの。
 マリアが急場で第二王子の相手になれたのは、第一王子の妃候補として、先にお墨付きを得ていたからだ。
 後から不名誉な事実が露見すれば、当然、周りが止めにかかる。

 幸か不幸か、こういう場合の処し方について、マリアは詳しい。

「不名誉な噂につきましては、ヘンリー様にご協力いただければ解決しますわ」
「オレ?」

 きょとんと自分を指さすヘンリーに、マリアは寝起きとは思えないほど麗しく笑いかけた。

「ええ。貴方が一晩中、この部屋にいたと証言してくだされば、いかがわしい噂は無くなりますでしょう?」

 後ろ暗いところが一点もないマリアだが、婚約者に内定した当初は他の貴族からの嫌がらせも多々あった。
 そういうとき、父がどう対処していたのか知っている。