マリアは、レイノルドの人生において、なくてはならない女性だ。
 彼女がいるから、レイノルドは不当な扱いを受けても、心が荒れ果てても、第二王子の身分を投げ出さずに生きてこられた。

 マリアと結ばれるためなら何だってする。悪役にだってなれる。
 それだけ長い間、レイノルドはマリアを想い続けてきた。

「恋がしたいのは、あんただけじゃないんだぞ」

 レイノルドは、唇をとがらせてマリアの頬を突いた。
 すっかり安眠しているマリアは、「装飾には、もっとリボンを……いいえ、チュロスではなく」とわけの分からない寝言を発する。

「はぁ……。あんたは、ほんと……」

 このかわいい恋人をどうしてくれようと思いながら、病み上がりの夜は更けていった。