「帰らないでって、言ったんだった……」

 律儀にそばにいてくれたマリアの優しさに、レイノルドの胸が、きゅっと切なくなった。

 レモンイエローのサマードレスは昼間の装いだ。高貴な生まれの令嬢が、昼間から一度も着替えずに夜まで過ごすなんて一大事だろう。
 椅子に座ったまま突っ伏して眠るのだってそうだ。マリアに妃教育をほどこした教師が見たら、行儀が悪いと頭から角を出すいきおいで怒るようにはしたない。

 そんな行いをしてまで、自分から離れずにいてくれた。
 彼女の思いやりと優しさに、自然と愛しさが沸き上がってくる。

「ありがと、な」

 柔らかな表情で告げて、物思う。
 この人と結婚したら国が滅ぶだなんて、言いがかりにもほどがある。