マリアは、おとがいに指をかけられ、顔を上向けられた。
 そこに、クレロは目を伏せて顔を近づけてくる。

 細まった黄色い瞳は、一心にマリアに注がれている。
 マリアの胸で、ドキン、と鼓動が跳ねた。

「い、いけませんわ、レンドルム様。わたくしには――」

 大切な恋人がいるのです!

 叫ぼうとしたその時、クレロは「これだ」と口にして上体を起こした。
 そして、マリアの目元にアイペンシルを滑らせる。

「マリアヴェーラ様には、目を強調する化粧の方がお似合いです。これで肖像画にふさわしいお顔立ちになりましたよ。……真っ赤になって、どうなさいました?」
「何でもございませんわ!」