ミゼルはわざわざ家に戻って、自分の化粧品を持ってきてくれた。
 ベージュやブラウン、コーラルなど、淡い色合いが取りそろえられたパレットは、マリアにとって新鮮だった。

 試しに塗ってみたところ、全く似合わないというわけではなかったので、あとは化粧慣れした侍女の手腕に賭けることにしたのだ。

 化粧係は、大小さまざまなブラシを使い分けて、色を肌にのせていく。
 アイラインは省いて目と眉を仕上げ、頬にもふんわりと紅を差し、口紅を塗って仕上げる。
 完成した化粧を見て、マリアは驚いた。

「わたくしの顔立ちって、意外と柔らかかったのね……」

 ナチュラルメイクを施された顔には、派手でもクールでもなく、女性らしい品だけがある。
 いつもより地味だが、ドレスのインパクトに負けているわけでもない。
 いうなれば、垢抜けた雰囲気だ。
 変に力んでいた気合いが抜けて、大人の女性に脱皮したような。