絵のなかでまで、自分に嘘を吐かなければならないのか……。

 本音と建前に挟まれて息が苦しくなってしまったマリアは、ミゼルに助言を求めるためお茶に誘ったのだ。

「わたくしのために描かれない絵画に、自分の嗜好を押しつけるのは横暴ではないかしら。完璧な公爵令嬢マリアヴェーラ・ジステッドの姿をこそ、人々は望んでいるのに……。ミゼル様はどう思います?」
「そうですね……。ジステッド公爵家に飾られる絵画でしたら、〝高嶺の花〟らしい装いの方がいいかもしれません」
「貴方も、そうお考えになるのね」

「はい。でも、世間体を気にしての意見ではありません。もしも、かわいい格好で描いてもらったら、マリアヴェーラ様はいつまでも……それこそ王家に嫁いでもなお、あれで良かったのかと気になさるでしょう?」

 ミゼルは、マリア以上にマリアが気にしいだと分かってくれていた。