くだらな過ぎて怒る気にもならないが、マリアの強いイメージと毒を重ねる想像力は評価してあげたい。
 あわよくば、食えるはずがない相手だと気づいてほしかった。

 内心で毒づくマリアとは対照的に、ミゼルはおっとりお菓子を頬張る。

「スズランの毒は、無闇に狩り取られないためのものなんです。だから花言葉は『純潔』や『愛らしい』といった良い意味で、とくに有名なのは『再び幸せが訪れる』ですね」
「再び幸せが訪れる……」

 レイノルドは、マリアが婚約破棄の憂き目にあって、みっともなく大泣きして手に入れた新たな婚約者だ。
 再びの幸いとは、まさしくマリアにとっての彼だった。

「レイノルド様がスズランを選んだのは偶然でしょうけれど、そう思うと嬉しいわ」

 ふわっと微笑むマリアにつられて、ミゼルも笑顔になった。