ジステッド公爵家の温室で、マリアはミゼルとお茶を楽しんでいた。

「――その店で、レイノルド様がおそろいのアクセサリーを買ってくださったの」

 待ち合わせデートで買ったスズランのブローチは、今日もマリアの胸にあった。
 着ているマドラスチェックのドレスには似合わないが、このブローチを付けているとレイノルドが側にいる気がして、どんな服でも身につけてしまうのだ。

 涼しげなフレアードレスを着たミゼルは、照れた風にブローチを見つめるマリアに微笑みかける。

「マリアヴェーラ様のお人柄を表わしたように可愛らしいブローチですね。しかも、スズランの意匠だなんて。お二人にぴったりだわ」
「スズランがどうかして? たしか、毒を持っている花よね」

 ネリネと令嬢たちに〝枯れどきを知らない毒花〟と呼ばれていたのを思い出す。