マリアを立たせたレイノルドは、器用に人の流れを抜けていく。

「早めに広場に来て入り口を見張ってた。そしたら、あんたは脇目も振らず、まっすぐに時計台を目指した。どうやって俺と落ち合う気だと思って、黙って後ろをついて回っていたら、思いがけずぶつかった」
「だから、どこを見てもいらっしゃらなかったのですわね」

 後ろから付けられていたら、いつまでも見つけられるはずがない。
 マリアの目が、頭の真後ろにでも付いていないかぎり。

「悪ふざけも大概にしてくださらないかしら。わたくし、必死で探しましたのよ。それにしても、この人混みのなかで、よくわたくしを見つけられましたわね」
「目立っていたからすぐに分かった」
「わたくしが?」

 マリアは急に恥ずかしくなった。
 似合わない可愛らしい装いで来たから、悪目立ちしてしまったようだ。