あんなに探していた待ち合わせ相手は、マリアの下敷きになって薄笑いしていた。

 ひっくり返っていても美貌は健在だ。
 冷ややかな瞳と形のいい鼻梁、淡く色づく唇からは、凜とした性格と遊び人めいた余裕が感じられる。

 目にかかる長さの銀髪はみがいた剣のように輝き、長身をおおう上等なコートの漆黒が、隠しきれない高貴な印象を下支えしていた。

 彼こそ、レイノルド・N・タスティリヤ。
 このタスティリヤ王国の第二王子である。

「こんなに側にいただなんて……。わたくし、ちっとも気づきませんでしたわ」
「気づかなくて当然だ。ずっと、あんたの後ろを取ってたから」
「どういうことですの?」