【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい

 ――こっちの方が、あんたらしくてずっといいし、好きだ。

 ふいに、いつかの声がよみがえった。
 可愛いものが似合わないと自信をなくしていたマリアを救ってくれた優しい言葉は、レイノルドがかけてくれたもの。
 いつもの自分に逃げることは、彼の想いを裏切ることになる。

「今日は、このドレスにします」

 マリアは心を決めた。
 急いでコルセットを締めてもらい、ドレスを身につけて髪をセットする。
 肌には真珠の粉を叩き、頬と唇は淡いピンク色に染める。爪を桜貝色に塗って、支度は完成だ。

「そうだわ。鞄も持っていかないと!」

 普段は侍女が荷物を持ってくれるので、マリアは鞄を持つ習慣がなかった。貴族令嬢が持つべきものは扇と日傘、フォークとナイフと誇りだけだ。