マリアは、学園内で威張ったりはしなかったが、心から打ち解ける友達は少なかった。〝高嶺の花〟と持ち上げられていた分だけ、周りより高いところにいたからだ。

 聖女として崇敬されているネリネもまた同じ。真の友達を作るのが難しいのに、さらに嫌われる真似をしていては、いつか大きなしっぺ返しが来る。

「ネリネ様、心を入れ替えてくださいませ。心からの謝罪をいただけましたら、聖女の主導で悪評が生み出され、広められた一切合切を秘密にいたします。頬の怪我は、自分で引っ掻いたということで始末しますわ。いかがでしょう」

 慈愛の微笑みを浮かべるマリアを、ネリネはギッと睨みつけた。

「あたしからレイノルド様を奪ったあんたに謝るだなんて、ぜったいに嫌! 覚えてなさい。どんな手を使ってでも、あんたを破滅させてやるんだから!!」