天使の天井絵が描かれたサロンには、色とりどりのドレスでめかし込んだ令嬢たちの姿があった。
 白いクロスを引いた長テーブルで、薫り高い紅茶をすすり、三段皿にもったケーキや焼き菓子を口に入れながら、とりとめもない会話に興じている。

「ねえ、お聞きになりまして。稀代の悪女の噂!」
「ジステッド公爵令嬢のことなら、第一王子に婚約破棄されて、即座に第二王子へ乗り換えられたとか」
「王子の婚約者としてチヤホヤされるのが、そんなにお気に召したのかしらねぇ」

 可憐な顔をよせる様子は小鳥のようなのに、話題はえげつなかった。可憐なケーキとは食いあわせが悪そうな噂が、テーブルのあちらこちらで飛びかう。

「王位継承権を第二王子に横取りさせるために、第一王子の恋人を魔法でおじさんに変えて、心神を衰弱させてしまったって本当なの?」
「本当よ。あたし、その場面をこの目で見たわ!」