離れていても相手の笑顔を想像して、小さな思いやりを積み上げていく。自分勝手や一人よがりではなく、二人がかりで手探りしながら、ゆっくりと形作っていく。

 いじらしくて、もどかしくて、胸がきゅんと鳴る、こんな恋を、マリアはずっとしてみたかった。

「マリアヴェーラ様にとって恋が何より大事なのは分かりますが、ご自分のお立場をお忘れなきよう。第二王子の婚約者としての日々は多忙でございます」

「分かっているわ。今日は歴史学のコベント教授とお会いして、婚約披露パーティーで着るドレスのための採寸ね。それが終わったら、ご婦人が集まる社交サロンに顔を出すから準備しておいてくれるかしら」