「お言葉ですが、お父様。わたくし、小市民の噂ごときでは寝込みませんわ。ジステッド公爵家も、ただの噂で土壌が揺らぐような軟弱な家系ではございません。愚か者には罵らせておけばよろしいのですわ。喉元を過ぎれば皆、わたくしのことなんて忘れますもの」

「これで第二王子の寵愛が遠のいたらどうする!」
「ありえませんわ」

 マリアは、ドレスに引っかかった調査書を手で払い、さっそうと身をひるがえした。

「だって、レイノルド様とわたくしは、恋をしているんですもの」