「――わたくしと、恋をしてくださいませ。みんなが嫉妬するような、可愛らしくて、切なくて、胸が張り裂けそうな大恋愛をしたいのです。あなたに応えることが出来まして?」
「はっ。わざわざ聞くことかよ」

 レイノルドはいつも通り勝ち気で、それでいて、今まで見せたことのない幸せそうな表情でマリアを見返した。

「あんたと最高の恋をしてやる。――俺の、花嫁になってほしい」
「よろこんで」

 マリアが応えると、見守っていた人々から歓声があがった。喜びに突き動かされたレイノルドは、マリアを抱え上げて一回転すると、ぎゅうと抱きしめてきた。

 マリアは、レイノルドの胸に顔をうずめて笑う。
 彼女が見せた最高の笑顔は、高貴で知られた高嶺の花らしくない、けれど野に咲く花のようにかわいらしいものだった。
 
《完》