「お!あれ、愛莉の幼馴染じゃね?」

「え?」


ケラケラ笑う健司はそのままの笑顔を窓の外へと向けた。その視線の先には10人くらいの女の子に囲まれた浩介の姿。


いつものようにのほほんと笑顔を浮かべ、おしゃべりをしていた。





…ていうか!
さっきから全然移動してないじゃない!

私が浩介と別れた場所から
5メートルくらいしか進んでいない。

歩くの遅すぎ!!
早く教室に行きなさいよね!

…そして早く、
その手を振り払ってよ…。








「愛莉?」

「あ、え…。うん!浩介!あいつモテるよねー。小さい頃からずっとあんな感じなんだよー」


自然と眉間に皺を寄せていた私。

いけない
いけない。


不思議そうに私の顔を覗き込む健司に向けて笑顔を浮かべる。


「すげー。男として尊敬。」

「ふはっ、何それ!」


うんうん、と頷く
健司に今度は自然と笑みがこぼれた。




少しツンツンした髪。
笑うと見える八重歯。
着崩した制服。


どれも浩介とは違う。
でも、私的に健司も十分モテると思うんだけど。




「…何?俺、何か付いてる?」

「え、ううん!なんでもないっ」




ヒラヒラと両手を振ったとほぼ同時にガラっと教室のドアが開き、少し機嫌の悪そうな担任が顔を出した。


バラバラと
席に着くクラスメート。

私もその波にそって自分の席へと腰を下ろした。