死にたがりな君と、恋をはじめる


別に、そこまで変じゃないはずだ。



近所にだって礼儀正しい子はいるし、少しばかり大人びた子もいる。





……でも、ゆーま君のこれは大人びたって言うより、れっきとした大人のふるまいだった。






まるで子供が必死に大人になりたくて努力しているかのような、そんな変な違和感。







……気にしすぎか。







そう考えに終止符を打ち、ゆーま君にニコリと優しく笑いかけた。





「私とお兄ちゃんの名前覚えてくれたの? ありがとう。それじゃあ行こうか?」


「え、あっ……うんっ」







手を差し伸べると素直に手をつないでくれて、私はパンフレットを開き、迷子センターの位置を確認する。







ちょっと、遠いな……。






私は少し困って、ゆーま君に目を向けた。






「ゆーま君。たくさん歩くけど、大丈夫? 疲れてない?」


「あっ。うんっ。だいじょぶっ」






ぐっとつないでいない方の拳を握りしめて気合を入れるゆーま君に、私は少し心配になる。





「本当に大丈夫? 私、おんぶしようか?」


「おん、ぶ……う、ううんっ。自分で歩けるっ。僕もうすぐ一年生になってお兄さんになるんだから!」



「そこまで言うなら……そっか。でも、疲れたら言ってね?」






ゆーま君がこくりと頷くのを確認して、私はいつもよりペースを落として歩き出した。






その様子をレイが見てぷっと吹き出した。









『奈月ぎこちなくない? 今に手と足が一緒に出そう』






「なっ。うるさい! 私子供慣れしてないんだから仕方ないでしょ⁉」










私に小さい妹なんていないし。子供と触れ合ったのだってこれが初めてだ。





それにしてはちゃんと面倒を見れている方だろう。







自分で自分に及第点をあげたいくらいだ。