死にたがりな君と、恋をはじめる


『いや? ここに本物の幽霊がいるのにお化け屋敷に行くとか、よっぽどスリルが欲しいのかなーって』



「……それ、からかってる?」



『いやー。そんなことないですヨー』




「棒読みすぎ。何、お化け屋敷行きたくないの?」





そう聞くとレイは誤魔化すように少し笑って、歩き出す。









何、その反応。本当に私と行きたくないみたいな反応しないでほしい。


傷つくから。






少しばかりムッとして、それからレイの後を追う。




「うぁっ……」
「え?」






しばらく歩き続けているとトンっと何かが足に当たって、私は足元を見降ろした。






するとそこにはしりもちをつく、幼稚園児くらいの男の子がいて、うるうるの涙でこちらを見上げていた。








「え、えっと……。君、お母さんはどこ? 一人なの?」



「うっ、うぅ……」




できるだけ優しい声と顔で話しかけるも、うぐっと男の子は眉を寄せて、その瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちた。




『あ~。奈月が泣かせた~。奈月が怖い顔するから~』


してないわっ!





くわっと目を見開いてしまおうとしたけど、子供の手前そんな顔をするわけにはいかずにこらえる。




「う、お、お兄ちゃんが……」

「え。お兄ちゃん?」



思いがけない言葉に、ぱちくりと目を大きく瞬かせた。







そして、瞬時にわかってしまった。







……もしかして、この子は。







……この子にはレイの姿が見えているの?




きょろきょろとあたりを見回すけど、まわりに『お兄ちゃん』らしき人はいないし、この子の視線といい、レイのことをいっているに違いないと思うんだ。





「えっと……君はなんていうお名前なの?」



「僕……? みんなからは、ゆーまって呼ばれてる……」




「そう。ゆーくんね。ゆーま君はさ、このお兄ちゃんが見えるの?」






レイを指差して聞くと、ゆーま君はこくりと小さくうなずいた。