死にたがりな君と、恋をはじめる


「ひどいな~。人をバケモノ扱いして~、私の顔、そんなに怖い?」





カーテンをシャッと開けられて、見えた笑顔に顔を引きつらせる。





えぇ、怖いですとも。

この世の何よりもあんたの笑顔が怖いよ。





内心そう毒づきつつ、私は首を振った。





「……いや、別に怖くないけど、驚いて」

「え~、驚かせちゃってごめんね? 急に来たらそりゃびっくりするよねぇ」





田中はさも申し訳なさそうに眉を寄せると、

手に持っている荷物を顔の横まで持ち上げた。




「でも私、佐川ちゃんの荷物持ってきてあげたんだよ? 少しは感謝してよ~」





はいっと、カバンを手渡されて、ぎょっと目を見開いた。




え、何この親切。怖い……何か、されてる?






そんな考えに至ってしまって、カバンをなめるように見るけど、

汚れているところもないし、キーホルダーも、取られていない。





そんな私の様子を見て、田中はぷっと吹き出した。





「あははっ、何かされてると思ったの~? そんなひどいことしないよ~。

今回は本当にただの親切心だよ。疑うなんてひどいなぁ」





くすくすと笑われて、ムッとするけど、私の手にあるカバンには何の傷もない。



どうやら、本当にただの親切、らしい。




そう思いそうになって、首を振った。




……いや、そんなわけない。


この女が、目的もなしに、親切になるなんて、そんなわけがない。