死にたがりな君と、恋をはじめる

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「ねえ、佐川ちゃん! 今日ってどうしてこんなに教室に来るの遅かったの~? 

来づらかった?」




放課後になると、すぐに田中がうちの席の前に来た。






にこにことした笑顔と、やわらかい言葉には皮肉が込められていて、私はふ、と笑った。





「ちょっと眠くてボーっとしちゃって、本当に私馬鹿だよね」


「あははっ、私と会った後、寝ぼけちゃったんだ? 面白い話だね~」






眉を寄せてあははっと笑われて、私はうつむいた。




……彼女の笑顔は、なんというか、怖い。




汚い本音を全部カバーして隠すような、奇妙な顔。




……不気味だ。




その笑顔を正面から見ると、なんだか心の中がざわざわとざわめいて、うるさい。







「……ねぇ、佐川ちゃん。今から時間、ある?」


「……」








……本当に馬鹿馬鹿しい。



ある? なんて、聞く気はないくせに。





田中がこう聞いてきたときは、いじめの始まりだ。


拒否すればいいのに、拒否さえすれば、いいのに。





「……大丈夫、時間なら、あるよ」



……明日からのことを考えて、なんにも行動できない私は、本当に臆病ものだ。