「あっ、佐川ちゃん、佐川奈月ちゃ~ん! おはよう!」
「っ」
ふいに声をかけられて肩がびくっと震えた。
この学校内で私に、友好的に話しかけてくれる人なんていない。
……この声は。
「……おはよう。田中さん」
「あはは、友花でいいって言ったじゃん。固いなー佐川ちゃんは。仲よくしよー?」
茶色いあごくらいまでの髪をふわりと揺らし、優しい視線をこちらに向ける。
薄い茶色の瞳はにこやかに細められていた。
……嘘つき。本当は仲よくなんてしたくないくせに。
私は心の中でそう呟いた。
彼女の名前は、田中友花。
……私のいじめの主犯だ。
にこりと笑いかけられて、私は冷ややかな視線を浴びせた。
私は知っている。
その優しげな視線に隠された悪意を。
そんな相手と仲良くできるわけないじゃない、こいつ馬鹿か。
ぶつぶつと悪態をついてしまう。
私の視線に気が付いたのか、田中はすぅっと表情を曇らせた。
「え、何。その目」
「……いや、別に」
急に低くなった声に、私は目をそらす。
「ふーん……」
田中は数秒思案すると、ふっと唇に笑みを浮かべた。
「あんまり調子乗らないでよ? 前にされたこと、覚えてないのかな?」
「……心配しなくても、別に調子乗ってないから」


