『……次の問題は、家族だね』
「……うん」
ささやくようなレイの声に、私は少しの沈黙の後体を起こし、こくんと頷いた。
まだ、親に話すほどの決意は、ない。
それでも、誠おばさんには言いたいんだ。
細く息を吐き、両手の拳をギュッと力強く握りしめた。
そんな私の様子を見つめていたレイは、はぁっと大きなため息をつく。
そして、私に身を寄せ、顔を除き込んでくる。
にこっとあたたかな木漏れ日のような笑み。
『まぁ、そんなに根を詰めなくても大丈夫だよ。だって、奈月には俺がいるじゃん?』
「レイ……」
レイの言葉に目を大きく見開き、それから笑い返した。
「あはは。頼もしー……ありがとう」
そう返すと、私は地面に視線を落とす。
……私は、もう一人じゃない。
レイの言葉がこんなにも胸を満たして、こんなにも温かいって。
その事実が、どれほど嬉しいか。
「――……よしっ」
私は勢いをつけて立ち上がると、レイを振り返った。
『奈月?』
上目遣いに見つめてくるレイに、私は二カッと明るい笑みを浮かべた。
「レイ、私……今日誠おばさんに話すよ。……だから、一つだけ。応援してくれる?」
『……っ』
レイはひゅっと小さく息を吸って、私の目を見た。
それから決意に満ちた私に、ふっと眩しそうに目を細めた。
その口が微かに開いた。
『……頑張れ』
レイの手が伸びてきて、頬を撫でてくれる。
私は、その手の熱に、目を閉じた。
「……うん」
私はその一言で胸がいっぱいで、そのままの姿勢で、頷いた。
レイ、頑張るよ、私……。
だから、見届けてね。
どんな結末が待っていようと……。


