それでも田中は憤然したようにこちらを睨みつけてきて、私はごくりと唾を飲み込んだ。
私は、これほどまでに田中の恨みを買っていたのだろうか。
何で、こんなことになっているんだ。
ぐるぐるとそんなことが頭を回っている。
脳みそをフル回転させて原因を探るけど、そんなものは見つからなくて。
焦れば焦るほど、何も考えられなくなる。
急に黙った私に、田中は追い打ちをかける。
「何黙ってんのよ、馬鹿にしてんの⁉」
「え、いや……」
ものすごい剣幕に、少し引いてしまうけど、落ち着いた様子で聞き返した。
「そんなわけないでしょ。……それで、私が何をしたっていうの?」
あえて静かな口調で言うと、田中は胸を大きく動かして息を吐いた。
「……あんたが、苦しまなかったから」
「え?」
「あんたが、苦しまないから……私はっ」
「な、なんでそんなにも私を憎むの?」
再びそう聞くと、田中はフッと息を吐いて、近くにあったベンチに座り込んだ。
「……私の家が母子家庭ってこのは、知ってるでしょ」
「あ、うん」
さっきとは打って変わって抑揚のない声に、戸惑いながらもうなずく。
え……田中って情緒不安定だったり、する?
戸惑っていると、田中はベンチにゴロンと寝ころび、目元を手で隠した。


