人の心の内なんて、誰にもわからない。
だって、私はその人にはなれないんだから。
心の中を隅々まで盗み見るなんて、できるわけないんだから。
小学生の頃。
道徳の授業で、先生は言った。
人の気持ちを考えて行動すれば、争いは起こらないのだと。
だけど、それは私にとっては綺麗事でしかなくて。
どんなに人の事を思って行動していても、人間は面倒臭い生き物で。
人間関係がずっとうまくいくことなんて、九十パーセントない。
私達はそんな複雑な世界で日々過ごしているのだ。
一人ひとりの考えが違っていて、性格も違って。
そんな中で、自分とはまるっきり別人の心の事なんて、わかってたまるか。
自分の物差しで勝手に人をはかって、わかろうとすること自体――間違っている。
私はまっすぐに田中を見つめた。
「いくら考えてもわからないから。聞いてるの」
「っ……」
私が繰り出した正論に、田中はぐっと息を呑んだ。
わからないなら、聞けばいい。
黙っていても、どうせ人間関係は元からどうにかなっているんだ。
それだったら何かを発言したほうが得だと、思わない?


