「大丈夫だよ」

変わらないトーンのその言葉が私を安心させてくれる。

私は悠人のことがそのまま欲しくなって、手を大きく広げた。
悠人は一歩私の方に歩み寄ってくれて、被さるように私を包んでくれる。

何この人、すごく好きかも。

悠人の胸に顔をうずめながら、私もそっと腕を悠人の体に回す。

「腹減った」

頭上で悠人の声がした。

「具のないパスタなら作れるよ」
「具がないなら俺でも作れるよ」

悠人の顔を見上げる。
悠人は笑ってる。
そして顔をゆっくり近づけてきた。

キスをして、顔が離れると悠人はまだ笑ってる。

「すごいにんにくの味したんだけど」
「え?だって、だってパスタ食べてたし、悠人が来るなんて思ってないから沢山にんにく入れたよ、ずるいよ、そんなこと言うの、言わないでよ」

信じられない。
ああ、キスなんてするんじゃなかった。

ああ、にんにく入れ過ぎた。

後悔。
雰囲気にのまれる前に理性を働かせるんだった。

私は自分の顔が真っ赤になるのを自分でも感じて、悠人から一歩離れる。

引かれたかな。
やっと私の恋が動き出しそうだったのに。

悠人はずっと表情を変えずに笑って私を見てる。

「いつもにんにく臭いの食べてるもんね」

そう言って、頭をくしゃくしゃに撫でてきた。

なんでこの人は私のことを受け入れてくれるんだろう。